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地球からのSOS

次世代型の発電効率向上 東大・シャープが試作品

赤外線利用、量産品しのぐ

 ナノテクノロジー(超微細技術)を駆使して作る次世代太陽電池の性能向上が加速してきた。「量子ドット型」と呼ばれる新タイプで、東京大学やシャープのチームが現在量産されているシリコン系を上回る発電効率(光を電気に変える効率)をもつ試作品づくりに成功した。このタイプは理論的には60%という高い効率が期待され、早期に実用化すれば政府が掲げる太陽電池導入目標の達成に貢献しそうだ。

 量子ドット型は基盤にナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微細な半導体粒子を作り込み、太陽光が含む幅広い波長の光を無駄なく使って発電できる。有機系の「色素増感型」などと並び、次世代太陽電池の代表格とされる。

 東大先端科学技術研究センターの岡田至崇・准教授らはこのタイプでは世界最高となる発電効率16・1%の試作品を作製。従来の最高値を2倍前後引き上げ、一般的なシリコン系量産品の効率(15%前後)をしのいだ。

 インジウム・ガリウムなどを含む膜の中に高さ5ナノメートル、直径数十ナノメートルのインジウム・ヒ素の微粒子を規則正しく並べ、この膜をいくつも重ねた。従来の量子ドット型は太陽光に含まれる赤外線を吸収できなかったが、新タイプは赤外線を含む幅広い波長の光を利用でき、効率が飛躍的に向上した。2015年の実用化を目指す。

 東大ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構の荒川泰彦教授らもシャープと、発電効率16%の量子ドット型の試作に成功した。基盤にインジウム・ヒ素でできた極めて小さな粒を作り込んだ。これまでは電子が電池内にとどまることが課題だったが、荒川教授らは電子を余さずに取り出せる新方式を考案。発電効率を大幅に引き上げた。

 今後、シャープとの共同研究でさらに性能を高め、10年以内にも実用化を目指す。

量子ドット太陽電池 発電量拡大の切り札「10センチ角で1家庭分に」

 政府は温暖化ガス削減のため太陽光発電を2020年までに現在の20倍に増やす目標を打ち出した。その達成には太陽光パネルの設置面積の拡大とともに、発電効率の向上がカギを握る。現在主流のシリコン系は効率アップに限界が指摘され、量子ドット型など高効率の次世代型の研究に拍車が掛かりそうだ。

 シリコン系では三洋電機が5月に発表した効率23%が世界最高値。だが理論的に30%が限界とされ、ここ10年での伸び率も5ポイント程度と鈍化している。シリコンは太陽光の50%を占める赤外線を電気に変える効率が低く、熱として失われるエネルギーも多いからだ。

 一方、1990年代後半に提唱された量子ドット型は07年には7%が最高だったが、約2年で16%まで伸び、勢いがある。量子ドットのサイズや構造を工夫すれば幅広い波長の光を利用でき、理論値である60%まで伸びる公算は大きい。

 仮に40%を実現できれば「レンズを使って太陽光を集める方式により、10センチ角の太陽電池で家庭1軒分の電気がまかなえる」(岡田准教授)という。

 海外では米国やスペイン、オーストラリアなどが開発に力を入れ、日本でも経済産業省が開発支援に乗り出した。今後、製造コストの引き下げや、大型化しても効率を下げない技術などが課題になる。

▼ 量子ドット型太陽電池

 化合物にナノメートルサイズの極微細な半導体粒子(量子ドット)を作り込み、「量子効果」と呼ばれる現象を利用して発電する太陽電池。半導体粒子の大きさや構造などを工夫すれば、太陽光に含まれる様々な波長の光を利用できる。理論的な発電効率はシリコン系の約2倍に当たる60%といわれる。

(日本経済新聞2009年7月20日より抜粋)

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