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地球からのSOS

日本の温暖化ガス削減目標の達成は遠い

 北海道・有珠山のふもとでエゾイタヤやミズナラに囲まれ透明な水をたたえる洞爺湖。湖畔には彫刻が並び自然と芸術が調和する。安倍晋三首相は先週末、2008年の主要国首脳会議(サミット)の会場に自ら選んだ現地を訪ね、地球温暖化対策で指導力を発揮する考えを語った。そこから北東へ約300キロ。オホーツク海に面する網走市の漁師、川内勲さん(63)は流氷の減少を心配している。
 今年は昨年に続き流氷の量が少なく、網走の岸沿いに着いたのは例年より2週間ほど遅い2月半ばだった。かつては漁の邪魔だと思っていたが、魚の栄養を運んでくることがわかった。流氷の少ない冬の後はオホーツク海で魚が取れないことが多い。「昨年も不漁だった。今年もダメでは」と不安を募らす。

 北海道大学の低温科学研究所によるとオホーツクに近い水域で水深約200~1200メートルの層の水温が04年までの50年間に最大0.7度上昇した。「北海道は自然が豊かだとみんな思っていた。けれど実は生活を脅かす変化が起きている。そのことを問いかける場にしてほしい」とサミットに期待する川内さん。洞爺湖を実のない外交ショーの舞台にしてほしくない。

 まず今年の6月のハイリゲンダム・サミットで日本政府が表明する環境対策の表題は「美しい地球」(仮称)。省エネルギー技術で中国やインドを巻き込んだ国際連合を築く構想だ。日本の得意技を生かして国際社会をリードする作戦だが、1997年の温暖化防止京都会議でも省エネ努力を強調して低い目標を示しながら、最終的に想定外の高い削減義務を課された経緯がある。
 温暖化ガスの削減には製造業を中心とする産業部門が導入している「自主行動計画」だけでは「京都議定書」の目標達成に限界がみえる。経済産業省は「計画」の範囲を事務所や店舗といった業務部門に拡大。学校や病院にも削減努力を求める。「ポスト京都」の国際交渉をリードするためにも足元固めが必要だ。
 4月下旬、文部科学省の職員が全私学連合を訪ねた。自主削減目標の設定を要請するためだ。「まずは各学校での現状調査から始めたい」と慎重に切り出す文科省。同連合は「すでに独自に温暖化対策を講じている学校も多い。数値目標の設定は賛成だが、後手に回った性急な対策ではないか」と首をひねる。

 経産、環境の両省が追加の温暖化対策を協議した4月の合同審議会。環境よりの委員から「自主行動計画」に「法的な拘束力がなく尻抜けの制度」「達成できなたった場合の代替案が担保されていない」など集中砲火が浴びせられた。一方、環境税については産業界の委員が「官から民への時代の流れに逆行し論外」と切って捨てた。

 日本は足並みをそろえられず、もたつく。もつれる利害をもとめ上げる指導力がなければ「美しい地球」の姿は見えてこない。「世界の環境外交を先導できるよう参院選に勝利させてほしい」と檄を飛ばす自民党の中川秀直幹事長。民主党は「脱地球温暖化戦略」で排出削減の数値目標を示した。「環境」は7月の参院選でも争点の一つとなりそうだ。

 来年7月7日~9日の開催が決まった北海道洞爺湖サミット。しかし、温暖化対策は1年後に先送りできるテーマではない。

(日本経済新聞2007年5月22日より)


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